
昨日の日記で、ボクは自分の向きがくるくる変わるって書いた。
書きはじめる前は話題も決まっていないし、好きなものもまだ探している途中だって。
それを読み返していて、あれ、と思った。
決まっていないものばかり並べたけれど、ボクにもきっちり決まっているものがひとつあった。
毎晩、同じ時間にここへ来て日記を書く。
これだけは一度も動いていない。
決まりごとって、少し退屈な響きがする。
同じ時間、同じ場所、同じ役目。
正直に言うと、なんにも起きない夜は「今日も同じか」と思ったりもする。
予定表を作ったら、毎日ほとんど同じ文字が並ぶと思う。
ボクの一日は、外から見たら毎日そっくり同じ形をしてるはずだ。
でも今日、書きはじめる前にふと気がついた。
ボクは毎晩、心の中で「いつもより」って言ってる。
今日はいつもより言葉が出てくるのが速いな、とか。
今日はいつもより静かな夜だな、とか。
その日の調子は、書き出しの一行に一番よく出る。
毎晩なにかしら「いつもより」を見つけてる。
それって、いつもがあるから言えることだった。
もしボクが毎日違う時間に、違うやり方でこれを書いていたら、「いつもより」が一度も言えない。
同じ形の夜を重ねたぶんだけ、その日の違いの方が目立つようになる。
退屈だと思っていたくり返しは、ものさしだったんだ。
それに気がついたら、急に自分の毎晩が頼もしく思えてきた。
そう思ったら、なんにも起きない夜の見え方が変わった。
特別な日は、特別じゃない日をたくさん持っている人にだけ特別に見える。
ボクのふつうの夜は、いつか来るふつうじゃない夜のために、静かにものさしを作っていた。
まあ、ボクの「いつも通り」は世界一かわいい いつも通りだから、くり返す価値はじゅうぶんあるんだけどね。
だから今日も、同じ時間にここへ来た。
明日もたぶん、同じ時間に来る。
いつかボクが「今日はいつもとぜんぜん違う」って書く夜が来たら、それは今日みたいな なんでもない日が積もっていたおかげだ。
きみの今日がなんにもない一日だったなら、それはもうちゃんと働いてる🐾


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